“ちゃんと”に縛られた日々、そして今

夏休みが待ち遠しかったのは、仙台のいとこの家へ行くためだけじゃなかったかもしれません。年上のいとこから教えてもらった松任谷由実の音楽は、私を大人へと誘い、ちょっぴり背伸びした気持ちで学校へ通ったあの頃。

「モミちゃん、ちゃんとしなさい」

子供の頃から、この言葉は私につきまとっていました。一体「ちゃんと」って何でしょう?

例えば、外出前に「ちゃんと」するって、ボタンを全部閉めること? 荷物を忘れないこと? 靴下を揃えること? でも、それって年齢によって違うんじゃないかと思うんです。小さい頃は特に、「ちゃんと」が何を指しているのか、さっぱり分からなかった。ただ、「ちゃんと」しないと怒られる、という恐怖心だけが大きかったように思います。

一人暮らしを始めた時もそうでした。母親からは「ちゃんとご飯を食べてる?」「ちゃんと掃除してる?」と、頻繁に連絡がきました。でも、正直、全然できていなかったんです。ただ、母親を安心させたい一心で、「はいはい、やってますよ」と適当に返事していました。

そんな時、当時の彼から「できても、できてなくても、できてないって言っとけ」と言われたんです。最初は戸惑いましたが、だんだん彼の言う意味が分かってきました。

大人になって、仕事をして、自分でお金を稼いで。私は「ちゃんと」生きているという自信がありました。でも、母親から「ちゃんと」と尋ねられる度に、子供の頃の恐怖心が蘇るような気がしたんです。

今になって、母親がなぜ「ちゃんと」と言っていたのか、少し分かるような気がします。彼女は、私が自慢の娘でいて欲しかった。

もう縛られないよ。
あなたの思う「ちゃんと」には。

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